月下の誓約


 塔矢に指差されて和成はガックリ肩を落とす。


「塔矢殿。私の私生活のダメ出しはまた今度でいいですから。誰に聞いたんですか、それ」

「紗也様だ」


 和成が紗也を見ると、紗也はあわてて目を逸らした。


「こいつはこんな人畜無害のかわいい顔をしてますけど、あなたに惚れてる男なんですから油断してるとまた抱きつかれますよ」

「ひとをケダモノの様に言わないで下さいよ!」


 あわてて和成が反論すると、その横で紗也がさらりと言い放った。


「別にいいわよ。抱きつかれるくらい。私も抱きついてるし」


 男二人は同時に紗也を見つめて硬直する。

 少しして塔矢が、和成を睨んで尋ねた。


「おまえ、そんなに再々紗也様に抱きつかれてるのか?」

< 368 / 623 >

この作品をシェア

pagetop