月下の誓約


 今にも殴られそうな気がして和成はうろたえる。


「抱きつかれたのは先の戦の時だけです」


 紗也は大げさにため息をついて苦笑した。


「もう。抱きつかれたくらいで塔矢ったら大げさに騒ぎすぎなのよ。別にゴーカンされたわけじゃなし」


 男二人は再び同時に硬直する。

 少しして塔矢が先程よりも激しく怒りを孕んだ目で和成を睨んだ。


「そんな事されてたら、私が即刻首をはねております!」


 あまりの剣幕に、和成は塔矢に両手の平を向けて一歩退く。


「本当にしたわけじゃないんですから、そんな殺気立った目で睨まないで下さい」

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