月下の誓約


 次の瞬間、塔矢はハタと気が付いて殺気を消し、紗也に問いかけた。


「紗也様。その言葉はどこでお知りになりましたか?」
「え? ゴーカン? 広域情報通信網の事件記事」
「意味はご存じですか?」
「男の人が女の人に乱暴する事でしょ?」
「具体的には?」
「……殴ったり、とか?」


 塔矢はホッとしたようにため息をつく。


「なるほど。ご存じないんですね」
「えーっ? 違うの?!」


 紗也が驚いたように目を見張った。


「広い意味では間違っておりませんが、正確ではありません。女官長にお伝えしておきましょう」


 塔矢が笑ってそう言うと、紗也はあせってうろたえる。


「それ、間違ったらいけないの? 私、何か叱られる事言ったの?」


 塔矢はさらに破顔すると、穏やかに諭す。


「叱っていただく訳ではありません。正しい知識を身に付けて頂くだけです」

< 370 / 623 >

この作品をシェア

pagetop