月下の誓約
それを聞いて紗也は安堵のため息をもらした。
そして、横にいた和成に尋ねる。
「ねぇ。和成は意味知ってるの?」
和成は横目で紗也を見下ろす。
「知ってますけど」
答えた後、嫌な予感がして即座に目を逸らした。
「じゃあ、教えてよ。どういう意味?」
案の定な攻撃が来た。
目を逸らしたまま和成は憮然と答える。
「女官長にお聞き下さい」
紗也は立ち上がって、和成の袖を引っ張った。
「なんでー? 知ってるなら教えてよ」
「私に聞かないで下さい」
和成が助けを求めるように塔矢を見つめると、塔矢はひとつ咳払いをした。
紗也は塔矢に目を向け、諦めて椅子に座り直す。
「紗也様。話を元に戻しますけど、今後和成の部屋をひとりで訪れるのはおやめ下さい。和成に御用の時は自室か執務室にお呼び下さい」
塔矢がそう言うと、紗也は上目遣いに塔矢を見つめ、「わかった」と不服そうに返事をした。
和成はホッと一息ついて技術局へと帰って行った。