月下の誓約
和成が問いかけると、紗也はひざを抱えて俯いた。
「申し訳ありませんが、私にはわざわざ女官たちを眠らせてまでいらっしゃる理由がわかりかねます。失礼ながらあなたがご自分でおっしゃるように大した用事ではないようにお見受けいたします」
その言葉に紗也は少しふてくされたような表情を浮かべ、横目で和成を見つめる。
「私と話すのイヤなの?」
「イヤな訳ではありません。わざわざご足労願わなくてもお呼び下されば私の方がお伺いいたしますと何度も申し上げてるじゃないですか。どうして、そうなさらないのか理由がわからないんです」
紗也は抱えたひざの上にあごを乗せてポツリとつぶやいた。
「二人きりの方がよかったの」
ドキリとして、和成は思わず紗也を見る。
「どうしても確かめたい事があって、女官たちや塔矢がいたんじゃわからない気がしたから」
理由を聞いてもさっぱり意味がわからない。
訳がわからないのに先程の一言が効いていて、和成の鼓動は収まらない。