月下の誓約
和成が黙っているので紗也は眉を寄せると、上目遣いに見つめながら問いかけた。
「ダメ?」
和成は相変わらず黙ったまま動かない。
「この間、和成に抱きしめられた時、自分が想像してたのと実際に感じた感覚が違ってたからびっくりしたの。でも、それって突然で驚いたからなのか、それとも突然じゃなくてもそうなのか、わからないの。だからもう一度ぎゅって抱いて欲しいの」
紗也の言葉はそのままの意味だった。
考えてみれば強姦の意味も知らない紗也が、和成の考えているような意味でそんな事を言うわけがない。
勘違いがわかった途端、一気に全身から力が抜けた。
両ひざの上に両腕を投げだし、身体を半分に折り曲げるほど項垂れて大きくため息をつく。
その様子を紗也が不思議そうに見つめた。
「どうしたの?」
和成は項垂れたまま、力なく答える。
「思わず違う事を考えてしまった自分の助平おやじっぷりに呆れてるだけです」