月下の誓約


「私の想いはご存じのはずでしょう?」
「知ってるけど」


 和成の想いを知ってなお、無邪気で無防備な紗也に少し苛立つ。


「だったら察して下さいよ。そんな嬉しい事……。あなたに触れてしまったら離れたくなくなるじゃないですか」


 吐き捨てるように言った後、照れくさくて顔が熱くなってきた。
 チラリと紗也を見ると不思議そうに目を丸くして和成を見ている。


「そういうもんなの?」
「他の人はどうだか知りませんけど、私はそうなんです」


 顔を赤くしてふてくされたようにそっぽを向いた和成を、紗也は笑いながら指差した。


「かわいーっ」


 いつものように怒鳴り返す気にもなれず、和成は黙って紗也から目を逸らす。

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