月下の誓約


「じゃあ、取り引きしない?」


 佐矢子に持ちかけられた取り引きを思い出して、和成は紗也を見つめながら身構えた。


「っていうか、共犯者になって欲しいの」

「どういう事ですか?」

「私はどうしても確かめたいから和成に抱きしめて欲しいの。でもその事は塔矢にも誰にも言わないから、和成も私が今夜ここに来た事を誰にも言わないで欲しいの」


 和成は目を細くして紗也を見据える。


「私が離れなくなったら、どうなさいますか?」


 紗也は微笑んで、軽く承諾した。


「いいよ。和成の気が済むまで離れなくて」


 それから思い出したように苦笑して付け加える。


「あ、でも女官たちが目を覚ます前に帰らないといけないから、適当なとこで離れてくれるとありがたいんだけど」

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