月下の誓約


 和成は少し微笑んで紗也ににじり寄った。
 そして背中から左腕を回し、肩に軽く手を添える。
 ほんの少し紗也に触れただけなのに、どんどん鼓動が早くなる。

 黙って見つめる紗也に、

「くれぐれも内密にお願いします」


 と断って、ゆっくりと肩を抱き寄せた。


「うん。和成もね」


 そう言って笑うと、紗也は和成の胸にもたれる。

 紗也の温もりを感じて、和成の鼓動は益々早くなる。
 欲を言えば両腕で抱きしめたかったけど、そうすると本当に離れられなくなりそうな気がした。

 何を確かめているのか、紗也は和成にもたれたままずっと動かない。

 ふと見上げた空には、新月へと向かう弓張り月が、なんだか後ろめたい共犯者たちを静かに見下ろしていた。

< 379 / 623 >

この作品をシェア

pagetop