月下の誓約
和成は少し微笑んで紗也ににじり寄った。
そして背中から左腕を回し、肩に軽く手を添える。
ほんの少し紗也に触れただけなのに、どんどん鼓動が早くなる。
黙って見つめる紗也に、
「くれぐれも内密にお願いします」
と断って、ゆっくりと肩を抱き寄せた。
「うん。和成もね」
そう言って笑うと、紗也は和成の胸にもたれる。
紗也の温もりを感じて、和成の鼓動は益々早くなる。
欲を言えば両腕で抱きしめたかったけど、そうすると本当に離れられなくなりそうな気がした。
何を確かめているのか、紗也は和成にもたれたままずっと動かない。
ふと見上げた空には、新月へと向かう弓張り月が、なんだか後ろめたい共犯者たちを静かに見下ろしていた。