月下の誓約
2.特報!!
杉森国に初霜が降りた朝、君主執務室には久々に和成の大声が響き渡った。
「塔矢殿――っ!」
部屋の戸を勢いよく開け放って現れた和成に、塔矢と紗也は同時に注目する。
すぐに塔矢が冷めた調子で問いかけた。
「怒鳴り込む相手を間違えてないか?」
「ちょっとぉ! どういう意味よ。私だって怒鳴られる心当たりないわよ」
すかさず紗也が反論する。
「間違いではありません。軍事に関わることで塔矢殿に内密にお話があります」
和成がそう言うと塔矢はため息と共に席を立った。
「だったら、もう少し静かに来い」
塔矢は紗也に一言断りを入れて、和成と共に執務室を出た。