月下の誓約


 配信元は元々、新聞や雑誌を扱う出版社で、記事の表示されていた領域は一般閲覧者が自由に記事を投稿できるように遊びで設けられた領域だった。
 もちろん定期的に内容は確認されて、問題のある記事は削除されるようになっている。
 情報処理部隊長が問い合わせた時には、件の記事もすでに削除されていた。

 記事がどこで書き込まれたかはある程度追跡できるが、誰が書き込んだのか個人の特定は難しい。


「前回は女官の噂話でも聞いた誰かの仕業だろうと思ってましたけど、今回はちょっと違うような気がします。考えたくはないんですけど……」


 和成が言い淀むと、塔矢がその後を受けて言う。


「城内に敵の間者か、或いはその内通者がいるってことか?」

「可能性はあります。電話では無理なので、今、情報処理部隊長が直接配信元の出版社に出向いて調査中です。あと、情報処理部隊に特別班が結成されて、城内の情報収集と聞き込みに当たっています」

「話がでかくなってきたな」


 そう言って塔矢は、腕を組んでうなった。

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