月下の誓約
「問題は、この記事が敵の目に触れたかどうかだ」
「何とも言えません」
和成はため息と共に詳細を説明する。
配信元は三時間ごとに記事の内容を確認しているらしい。
慎平が記事を目にしたのが午前八時五十分、隊長が問い合わせの電話をしたのが九時ちょうどだったので、その直前に記事が削除されたというから、最長で朝の六時から表示されていたことになる。
早朝なので広域情報通信網の閲覧者自体それほど多くはないと思われるが、敵の目に触れてないとは言い切れない。
「面が割れてしまえば標的がはっきりしてるから、おまえ今度は間者どころか刺客に命を狙われるかもな」
そう言って塔矢はニヤリと笑う。
和成は机の上にひじをついて頭をかかえた。
「笑い事じゃありませんよ。なんか塔矢殿おもしろがってませんか?」
「おまえが深刻に考え過ぎなんだ。相変わらず自分の事になると視野が狭くなるな」
「だって、護衛の私が命を狙われてたんじゃ、ご一緒すると紗也様に危害が及ぶ恐れがあるじゃないですか」