月下の誓約
塔矢はひとつ嘆息する。
「そっちを心配してたのか」
おもむろに顔を上げて、和成は塔矢に尋ねた。
「これって護衛解任の理由になりませんか?」
「まだ諦めてなかったのか。そんなもん却下だ、却下!」
「どうしてですか? 私より腕の立つ先輩はいくらでもいるじゃないですか」
「おまえ以上に紗也様のわがままをうまくあしらえる奴がいないからだ」
それを聞いて、和成は再び頭をかかえる。
「あしらえてませんよ。ちっとも言う事聞いてくれないし」
塔矢は椅子の背にもたれて腕を組んだ。
「護衛の件は置いといて根本原因の記事について少し冷静になって考えろ。俺は記事の投稿者は前回同様おもしろ半分の民間人だと思うぞ」
顔を上げた和成は、黙って塔矢を見つめる。