月下の誓約


「考えてもみろ。敵の間者だったら、わざわざ秋津全土に情報を知らせる事に何の意味がある。こっそり自国に情報を持ち帰った方が有意義だろう。投稿者が民間人だとすると、そいつに情報を提供した人間も敵の間者である可能性は極めて低い。間者が民間人に情報を提供しても意味がないからな。今回の一件で問題なのはあの記事が敵の目に触れたかどうかだけだ」

「そう言われれば、そうですね」

「案外また女官の噂話が元かもしれないな」


 そう言って笑う塔矢に、和成はため息をついて否定した。


「女官じゃないと思いますよ。彼女たちは私の剣の腕なんか知りませんし、興味もないと思います」

「なぜそう言えるんだ」


 和成は顔をしかめて目をそらす。


「だって、彼女たちの間で今流行ってることっていったら……」
「なんだ?」


 塔矢が身を乗り出して先を促した。

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