月下の誓約
和成は側の男を紗也に紹介する。
「紗也様、これは私の同期の友人です」
「え……紗也様……って、城主?」
男は途端にうろたえて和成から離れると姿勢を正した。
「平井右近(ひらいうこん)と申します。本日は本陣の警護を担当しております」
深々と頭を下げる右近に、紗也は笑顔を向けた。
「和成の友達なのね。今日はよろしく」
そう言って紗也は、目に好奇の色を湛えたまま和成に尋ねる。
「ねぇ、和成。砦の中を見てきていい?」