月下の誓約
和成は横目で塔矢を見ながら嫌々口を開く。
「……誰が一番に私の笑顔を見るか競争してるそうです」
案の定、塔矢は大声で笑った。
「笑い事じゃありませんよ。別に意識して笑わないようにしてるわけじゃないのに、そんな事聞いたら、うかつに笑えないじゃないですか」
このところ、和成は城内で雑談をする相手が増えてきたため、以前に比べて笑うようになってはいた。
ところが女官たちは紗也の身の回りの世話が主な仕事なので紗也の周りにいる事が多い。
紗也の側にやってくる和成は怒鳴り込んでくる事が多いので大概不機嫌顔だ。
最近は技術局にこもりっきりで紗也の側に来る事も稀なので、女官たちの間では相変わらず和成の笑顔は幻となっている。