月下の誓約


 やはり紗也は物見遊山気分のように見受けられる。
 これから戦が始まるというのに、露程も緊張感がない。

 だが戦場でへそを曲げられて、いつものようにわがまま放題に振る舞われては勝てる戦も勝てなくなる。
 戦そのものに関して、和成は負けるような気がしていなかった。
 紗也がおとなしく本陣にいてくれさえすれば。

 のどまで出かかった小言を飲み込んで、和成は静かに答えた。


「あまり時間がありません。少しだけになりますが右近に案内させましょう」
「いい。みんな忙しいんでしょう? ひとりで大丈夫だから」


 紗也は言い出したら聞かない。
 和成はここもひとつ息をついて譲歩した。


「では、十分以内にお戻り下さい。それと、砦の外には決してお出にならないように」
「うん、わかった」

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