月下の誓約


 翌朝、君主執務室には恒例の和成の怒号が響き渡った。


「紗也様――っ!」


 部屋の戸を勢いよく開け放って現れた和成に塔矢は呑気に問いかける。


「なんだ。今日も来たのか?」


 和成は塔矢の前を黙って素通りし、紗也の机に両手を叩きつけて頭の上から怒鳴りつけた。


「敵に塩を送るようなマネをなさるとは、どういうおつもりですか?!」


 紗也は両手で耳を塞ぎ、机に頬を付けて伏す。

 常にない和成の怒り様に、塔矢は思わず立ち上がって声を荒げた。


「和成! わきまえろ!」


 いつもならすぐに紗也に頭を下げる和成が、今日は険しい表情のまま黙って塔矢を見返す。
 塔矢は軽く目を閉じて一息つくと椅子に座り直した。

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