月下の誓約
「説明しろ」
「あの記事の情報提供者は紗也様です。お灸を据えて下さい」
執務室に沈黙が流れる。
少しして紗也が机に伏したまま嗚咽を漏らした。
その声で和成は、頭に上っていた血が一気に下がっていく。
紗也はこれまで、和成に怒鳴られて泣いた事は一度もない。
塔矢はため息をついて静かに言う。
「おまえに怒鳴られて泣くほど怖かったんだ。俺がお灸を据えるまでもないだろう」
紗也の机から一歩退いて、和成は頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。ですが、ひとつお聞かせ下さい」
紗也が鼻をすすりながら顔を上げる。
「どうして、あの記事の投稿者に情報を提供なさったのですか? 私の情報は軍事機密だという事はおわかりでしょう?」
「だってあの記事、全然違ってたし。うちの部隊情報は知れ渡ってるから隠しておく事はないって和成言ってたし」