月下の誓約


 和成は目を伏せて思わずため息をついた。


「……そういえば、そんな事を申しましたね」


 先の戦の時、紗也に部隊情報が敵に知られてもいいのかと聞かれ、元々知られているからかまわないと答えたのを紗也は覚えていたようだ。

 確かに杉森軍の部隊長の顔や名前は前線にいつもいるので知れ渡っている。
 しかし、和成は別だ。

 存在こそ知れ渡っているが、名前や顔は知られていなかったのだ。
 それを紗也に知らせてなかったのは和成の落ち度だ。

 軍事機密を外部に提供すること自体、論外な行為であるとはいえ、今回の事態はある意味自業自得と言えない事もない。


「確かに隠してはおりませんが、わざわざ秋津全土に知らせる必要もございません。今後は、城内や軍の情報を外部に提供するのはお控え下さい」


 和成はそう言って、再び頭を下げた。

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