月下の誓約
昼食後、和成が自室に戻ろうとしているところへ、前方から怒ったような顔をした紗也がものすごい勢いで駆け寄ってきた。
目の前で急停止すると和成を見上げて怒鳴る。
「和成! 女官たちの前で笑ったって本当なの?!」
「笑ったのではなく、笑ったところを偶然見られただけです」
「もう! なんで?! せっかく私だけが知ってる和成の秘密だったのに!」
和成はため息と共にガックリ肩を落とした。
「そんな事で怒られても困ります。第一それって秘密でもなんでもありませんし」
そこへ後ろから慎平が声をかけてきた。
紗也を見て一礼をする。
和成がこれ幸いと慎平に同意を求めた。
「なぁ、慎平。俺の笑顔って別に珍しくないよな」
「そうですね。別に珍しくは……」
「そういう事です」