月下の誓約


 雪祭りを一週間後に控えた朝、和成は紗也に呼ばれて君主執務室へと赴いた。

 部屋に入ったと同時に、一番奥にある机の向こうから紗也が笑顔で手を振る。


「和成、雪祭りに連れてって」

「雪祭りは一週間も先ですよ」

「だから今の内に予約しとくの。結局未だに城下に連れて行ってもらってないし、和成が誰かと約束する前に私が約束するの」

「雪祭りは一週間もあるんですよ。私も毎日誰かと出かけたりはしませんよ」


 交友関係の狭い和成は、毎日違う誰かと出かけたとしても、日の方が余ってしまうだろう。

 ため息をつく和成を、紗也は椅子の背にもたれて指差す。


「甘いわね。女官たちの間で不穏な動きがあるのよ」
「不穏って、また大げさな……。今度はなんの競争ですか?」

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