月下の誓約


「いくらニブくても、そんな勘違いしませんよ。とにかく、本人が直接手渡したものでなければ受け取りませんと言って全部返してます」

「じゃあ、直接手渡されたらどうするの?」

「お断りするつもりですが、今まで直接渡しに来た人はいません」

「えーっ? どうして? せっかく書いたんだから渡せばいいのに」


 不思議そうに目を見張る紗也を、和成は腕を組んで見下ろした。


「甘いですね。私からは”近寄るな光線”が出てるんですよ。近寄るにはかなりの勇気がいるそうです」


 紗也は呆れたように、冷めた目で和成を見る。


「その光線、最近威力が弱まってるみたいよ」
「え?」
「だって、女官たちが最近の和成は親しみやすくなったって言ってたもん」
「えぇ?!」


 紗也の言葉に、和成は思いきり動揺する。

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