月下の誓約
「見てくれはともかく、かわいいなんて考えた事もない。なにしろ出会い頭にケンカして以来五年間、毎日怒鳴らなかった日がないくらいだし」
「おまえ、城主を毎日怒鳴っているのか? よくクビにならないな」
「今日はまだ怒鳴ってない」
「そういう問題じゃないだろう」
呆れたようにため息をつく右近と共に、和成も大きくため息をつく。
「わかってる。毎日塔矢殿に注意は受けてるし、俺も反省はしてるんだ。だが実際、あの方のお側にお仕えしてみれば、おまえも俺の気苦労がわかるはずだ」
そして和成は顔を上げて、自分の鼻先を指差した。
「ほら、気苦労で老け込んだだろう?」
「全然。むしろ若返ってる気がするぞ」
間髪入れずに否定され、和成はガックリと項垂れる。