月下の誓約


「見てくれはともかく、かわいいなんて考えた事もない。なにしろ出会い頭にケンカして以来五年間、毎日怒鳴らなかった日がないくらいだし」

「おまえ、城主を毎日怒鳴っているのか? よくクビにならないな」
「今日はまだ怒鳴ってない」
「そういう問題じゃないだろう」


 呆れたようにため息をつく右近と共に、和成も大きくため息をつく。


「わかってる。毎日塔矢殿に注意は受けてるし、俺も反省はしてるんだ。だが実際、あの方のお側にお仕えしてみれば、おまえも俺の気苦労がわかるはずだ」


 そして和成は顔を上げて、自分の鼻先を指差した。


「ほら、気苦労で老け込んだだろう?」
「全然。むしろ若返ってる気がするぞ」


 間髪入れずに否定され、和成はガックリと項垂れる。

< 42 / 623 >

この作品をシェア

pagetop