月下の誓約
「ケチーッ! じゃあ、和成が教えてよ」
「お断りいたします。紗也様の秘密を教えていただけるなら、お教えしますが?」
和成がそう言うと、紗也は不思議そうに問い返した。
「私の秘密って何?」
「え……あの……」
思いもよらない反撃に、和成は言い淀む。
聞いてみたい事は三つあった。
毎夜のように訪れて何を確かめていたのか。
そして、紗也を抱きしめた夜いったい何を確かめていたのか。
紗也の想像と違っていたという感覚とは何なのか。
だが、それを今ここで問い質すと紗也との約束を破る事となり、同時に塔矢に殴られる。
和成は大きくため息をついて、
「……それでは、私は道路の除雪作業がありますので、これで失礼いたします」
と、何食わぬ顔で一礼し、紗也に背を向けた。