月下の誓約
即座に反対する和成を、紗也が不服そうに睨む。
「なんでよ。”天才美少年軍師”の像であって、和成の像じゃないでしょ?」
「”天才美少年軍師”は三津多和成であると秋津全土に知れ渡ってるんですよ。”天才美少年軍師”といえば、知ってる人は私を思い浮かべるんです」
「金髪の方にすればいいじゃない」
「よけいにイヤです。”天才美少年軍師”が三津多和成であると認識されている以上、肖像権は私にあります。私の承諾なしに使用すると法に訴えますよ」
「も~ぉ! 難しい屁理屈言われてもわかんない!」
「屁理屈ではなく理屈です。”天才美少年軍師”って私に何度も言わせないで下さい」
二人の間に挟まれて座った塔矢は、腕を組んで椅子の背にもたれ、いつもの展開に口を出す気にもなれず静観していた。
ふと周りを見回して、二人の口げんかを見慣れていない部隊長たちが、君主に臆することなく物申す和成をハラハラしながら見つめている事に気付く。