月下の誓約


 最後に意見や報告がないか、秋月が尋ねると、情報処理部隊長が手を挙げた。


「西方砦の警備部隊から、最近国境付近で浜崎の兵を何度か見かけたという報告が入っています。特にこちらの様子を窺っているとか、不審な行動は見られませんが一応浜崎との国境の見回りを強化してはどうかと思います」


 それを聞いて塔矢と和成は顔を見合わせる。


「塔矢殿、浜崎ってこの間の間者の……」
「あぁ。おまえの苦手な女軍師のとこだ」


 塔矢がニヤリと笑うと、和成はうろたえた。


「な、何か裏があるんでしょうか?」

「さあな。雪を踏んでみたかっただけかもしれないし。向こうじゃ、うちとの国境付近まで来ないと雪はないらしいからな」


 冬のこの時期、何か動きがあるとは考えにくいが、一応用心のため各部隊持ち回りで見回りを強化する事として散会となった。

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