月下の誓約


 翌日の午後、除雪作業へ向かおうとする和成を塔矢が呼び止めた。
 紗也が雪像作りを手伝いたいと言うので、雪像作り担当の塔矢と作業を交替してくれと言う。


「塔矢殿が一緒なら、わざわざ私と交替しなくても大丈夫じゃないですか」


 和成がそう言うと、塔矢は不愉快そうに顔をしかめた。


「おまえをご指名なんだ。四の五の言わずに交替しろ」


 そのふてくされたような態度がおかしくて和成は思わずクスリと笑う。


「まるで恋人に娘を取られた父親みたいですね」


 和成の言葉に塔矢は益々不機嫌な顔になる。


「誰が恋人だ。おまえ俺の知らない間に紗也様と何か進展があったんじゃないだろうな?」

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