月下の誓約
勘繰る塔矢に少しドキリとしながらも、和成は大きくため息をついた。
「たとえ話じゃないですか。絡まないで下さい。交替するのはかまいませんけど、今日私は雪下ろし担当です。キツイですよ」
「年寄り扱いするな」
塔矢は和成の額をペチッと叩いて、そのまま除雪作業へと向かった。
塔矢を見送った後、和成は執務室へ紗也を迎えに行く。
部屋の戸を開けると、頭の後ろで髪を一つに束ね、着ぶくれてダルマのように丸くなった紗也が笑顔で駆け寄ってきた。
和成の姿を見て不思議そうに尋ねる。
「どうしてそんなに薄着なの?」
「あなたが着込みすぎなんですよ」
「だって塔矢が風邪をひかないようにしっかり着込んで行けって言うから」
「そんなに着込んでたら、少し動いただけで汗をかきます。かえってお風邪を召しますよ」