月下の誓約
城の出口で和成は紗也と共に防寒靴に履き替え、防水手袋を嵌めると、手桶に水を汲んで外に出た。
昨日まで降り続いた雪がやんで、今日は朝から晴天に恵まれている。
城の前庭に降り積もった新雪が、柔らかな冬の陽光に照らされて眩しく煌めく。
時折、日射しで溶けかけた雪が、自らの重みに耐えきれず梢を揺らしてバサリと落ちた。
除雪され踏み固められた正門へと続く道の真ん中を、道具を引きずるようにして、老人のように背中を丸めゆっくりと進む慎平の姿が見える。
あまりにゆっくりと歩いているので、あっという間に追いついた和成は慎平の丸めた背中をポンと叩いた。
慎平はひとりだけ時間の流れが違うかのように、ゆっくりと振り返り紗也にゆっくり一礼すると、ゆっくりと和成に顔を向けた。
「どうしたんだ? 一気に年を取ったみたいだぞ」
和成が尋ねると、慎平は力なく微笑んだ。