月下の誓約


 皆に罵られ和成は幾分ムッとしながら反論した。


「私の策に喜んで乗ったのは皆さんじゃないですか」


 ふと見れば、先輩たちは和成の後ろに注目し、苦笑をこぼしながら固まっている。

 怪訝に思いつつ和成が振り返ると、そこには不機嫌そうな紗也が、塔矢隊の面々を睨んでいた。


「全部聞こえたわよ。手加減したら許さないから!」


 結んだ髪を勢いよく翻し、紗也は自陣へと戻っていく。
 それを見送り和成は軽く嘆息した。


「――だそうです。奮戦しましょう。幸いこちらは数で圧倒的に有利です。落ち着いて各個撃破していけば、策も必要ありません」

「だが、紗也様ひとりになったらどうする? 紗也様に雪玉はぶつけられねーぞ」

「そうなったら私が一騎打ちを申し出ます」

「まぁ、そういう無礼な事できる度胸のある奴って、おまえくらいのもんだしな。まかせるわ」


 笑って答える和成に、先輩は手を振って配置に付いた。

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