月下の誓約
「どういう意味ですか」
和成は不愉快そうに顔をしかめた後、前方の紗也陣営に向かって手を挙げる。
それを受けて紗也が開戦の号令を発し、雪合戦は再開した。
数に勝る塔矢隊が優勢なまま、戦局は進む。
紗也の陣営がいよいよ旗色が悪くなってきた時、茂典隊の隊員が投げた雪玉が塔矢隊の隊員の横をかすめ、後方の何かに当たった音がした。
後ろには何もないはずである。
「わっ! やべっ!」
玉を投げた者が思わず叫んで青ざめる。
塔矢隊の隊員たちが振り返ると、雪像の進捗状況を確認に来た総務部長が、当たって砕けた雪玉で肩を白く染めながら立っていた。
総務部長は頬をピクピクと震わせた後、大声で怒鳴る。
「こぉら、軍人ども! 隊長がいないからって子供みたいに遊ぶんじゃない!」
「申し訳ありませーん」
軍人たちは口々に謝りながら雪像作りの作業に戻っていった。