月下の誓約

 4.国境の見回り



 翌日早朝から、塔矢隊の内、国境の見回り当番十名は正門前に集合した。

 雪よけの帽子に断熱防護機能を強化した動きやすい丈夫な防寒着。
 同じ素材で作られた手袋は刀を握りやすいよう更に薄く、指先までピッタリと合うように伸縮自在になっている。
 同じく防寒靴は新雪に足を取られにくいように、靴底が広めになっていて滑り止め加工が施されていた。

 冬仕様の軍装束に身を包んだ軍人たちは塔矢の指示で四つの組に分かれると、四方から浜崎との国境へ向かった。

 夜の内に降った雪が、昨日除雪したばかりの道路や正門横の作りかけの雪像を覆い隠している。
 昨日とは打って変わって、どんよりと低い空から細かい雪が絶え間なくチラチラと舞い続けていた。

 和成は先輩隊員の里志(さとし)と二人で、浜崎国との国境の西端を目指した。

 浜崎国との国境は、高さ三間(さんげん)ほどの崖となっている。
 崖の上が杉森、下が浜崎だ。
 大した高さではないが、崖の下がえぐれて上部が反り返るような形になっているので、よじ登るのは難しい。
 唯一の登り口には杉森国西方砦が立ちふさがっていた。

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