月下の誓約
国境に近付くに従い、次第に雪は深くなっていく。
緩やかな斜面の、木々の間を縫うように、朝夕の見回り当番が踏み固めた細道が作られていた。
里志を前に和成が続いてその細道をたどる。
国境の崖にたどり着き崖に沿って歩き始めると、後ろに漠然とした気配を感じて、和成は度々振り向いた。
その様子を訝って里志が声をかける。
「何かあるのか?」
「いえ、何もないようです」
和成がそう答えて二人が再び歩き始めようとした時、背後でガサリと音がした。
二人は同時に振り返り、刀に手をかけて身構える。
路傍の灌木が再びガサガサと揺れ、積もった雪を振り落した。
「何者だ。出て来い」