月下の誓約


 和成が牽制すると、木の陰から緊張感のない声が聞こえてきた。


「ちょっと待って。足が抜けなくなっちゃって」


 その声に和成は一気に脱力する。
 刀から手を離し、大きくため息をついた。
 そして木の陰に歩み寄り右手を差し出す。


「どうぞ、お掴まり下さい」


 木の陰で膝まで雪に埋もれた紗也が、気まずそうに笑いながら和成の手に掴まった。

 和成に手を引かれ、雪から引っこ抜かれた紗也が木の陰から姿を現す。
 それを見た里志が驚きの声を上げた。


「え?! 紗也様?!」


 和成は里志にかまわず紗也を睨んで怒鳴りつける。

< 445 / 623 >

この作品をシェア

pagetop