月下の誓約
和成が牽制すると、木の陰から緊張感のない声が聞こえてきた。
「ちょっと待って。足が抜けなくなっちゃって」
その声に和成は一気に脱力する。
刀から手を離し、大きくため息をついた。
そして木の陰に歩み寄り右手を差し出す。
「どうぞ、お掴まり下さい」
木の陰で膝まで雪に埋もれた紗也が、気まずそうに笑いながら和成の手に掴まった。
和成に手を引かれ、雪から引っこ抜かれた紗也が木の陰から姿を現す。
それを見た里志が驚きの声を上げた。
「え?! 紗也様?!」
和成は里志にかまわず紗也を睨んで怒鳴りつける。