月下の誓約


「昨日あれほど申し上げましたのに、どうしていらしたんですか?! 私が気付いたからよかったものの、こんな人気のない山奥で雪にはまって動けないでいると凍死なさいますよ!」


 和成が紗也を怒鳴る姿を初めて目にした里志は、あわてて和成の腕を引く。


「和成! とりあえず塔矢殿に知らせよう」


 里志に言われて電話を取りだした途端、塔矢から連絡が入った。


『女官長から連絡があった。紗也様が城内から姿を消されたらしい』


 和成はため息を漏らして塔矢に告げる。


「今、連絡しようと思ってたとこです。紗也様はここにいらっしゃいます。私の後を追っていらしたようです。いかがいたしましょうか」


 塔矢が安堵のため息を漏らすのが聞こえた。

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