月下の誓約
ここは敵地。長居は無用だ。
和成は紗也を背負って立ち上がる。
そして雪を踏みしめながら、砦に向かって歩き始めた。
少しして背中で紗也が小さくつぶやく。
「……また、みんなに迷惑かけちゃった……」
紗也が落ち込んでいる様子なので、和成は努めて明るく返事をした。
「あなたが迷惑をかけるのは今に始まった事ではございません。みんな気にしていませんよ」
しかし、紗也の気持ちは収まらない。
「気にしてないんじゃなくて呆れてるんでしょ? 私なんかさっさと結婚してお婿さんに君主の座を譲ればいいってみんな思ってるのよ」
「誰かがそんな事を申しましたか?」