月下の誓約


 いよいよ険呑な雰囲気になってきたようだ。
 戦闘を回避できないからには、身軽になっておく必要がある。
 なんとしても紗也だけは無事で国に帰さなければ。

 浜崎兵は和成から目を離し、口々に若者をほめて浮かれている。
 その隙にとりあえずの安全を確保する。


「紗也様。後ろの木のうろに入り、目を閉じて耳を塞いでいて下さい」
「あんな大人数、相手にするの?」
「大丈夫です。最強の護衛を信じて下さい」


 不安げに問いかける紗也に、和成は少し笑って答えた。
 そしてチラリと紗也に視線を送った後、一歩前へ出る。

 紗也が言われた通り、うろの中に身体を隠すと同時に、浜崎兵たちが和成の方を向いた。

 目の前の兵士が刀を抜き、片手でその切っ先をまっすぐ和成へ向ける。


「モテモテの美少年軍師殿は敵地の偵察も女連れってか? 随分とナメたマネしてくれるよな」

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