月下の誓約


 兵士は薄笑いを浮かべて、刀を両手で握り直した。


「おまえの首を取れば、俺ら大手柄だ。言い訳できないこの状況で、よもや生きて帰れるとは思ってねーだろ? 覚悟しな」


 無駄だと思いつつも刀には手を触れず、和成は戦意のない事を伝えてみる。


「争うつもりはありません。退いて下さい」


 兵士は大声で嘲笑う。


「バカじゃねーの? 軍師のくせに状況を読めよ。はいそうですかって、退くとでも思ったか?!」


 そう言ったと同時に、浜崎兵は刀を振りかざして、和成に斬りかかった。


「ダメです!」


 和成の正体を見破った若者が悲痛な叫び声を上げた時、斬りかかった兵士の方が和成の前で倒れた。

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