月下の誓約
目にも留まらぬ早さで抜かれた和成の刀は、向かって来た浜崎兵を一刀のもとに切り伏せていたのだ。
先ほど叫んだ若者が力なく言葉を続ける。
「杉森の軍師は剣の腕も上級者なんです」
周りの兵士たちが動揺し、ざわめいた。
和成はもう一度、静かに言う。
「退いて下さい。退かねば斬ります」
目の前で仲間を切り捨てられ、殺気立った浜崎兵たちは一斉に武器を構えたものの、攻めかかる機会を逸していた。
和成の妙に落ち着き払った様子と隙のなさ、それに目の当たりにした剣の腕に躊躇したのだ。
滴る血を振り払うため、和成が右手で刀をひと振りすると、浜崎兵たちは一歩退いて身構える。
刃の先から飛び散った血が真っ白な雪の上に点々と赤い弧を描いた。