月下の誓約


 相手がひるんでいる隙に和成は周りを見回し、人数を確かめる。
 全部で十四人。内二人が槍兵。
 戦場でなら一人で相手にできるギリギリの人数だろうか。

 元々和成は華奢な少年体型なので、塔矢や右近に比べると力はそれほど強くない。
 持ち前の敏捷性と剣技でそれを補っていた。

 多勢に無勢な上、背後に紗也を守りながらでは可動域も限られる。
 動きを封じられていては本来の能力の半分も発揮できるかどうか。
 形勢はかなり不利と言ってよかった。

 それを悟られぬように両手で刀を握り直し、ゆっくり視線を巡らせ浜崎兵を睨め付ける。

 見ると、一番後ろにいる件の若者がひとりだけ刀を抜いていない事に気付いた。

 他の兵より頭一つ分背の高い彼は、一番後ろにいるのにその表情がよく見える。
 おどおどした様子で周りの兵を見つめている。
 まだ年若い彼は人を斬った事がないのかもしれない。
 ふと慎平を思い出した。

 和成と目が合った若者は、斜め前にいる兵の腕を引く。


「退きましょう、先輩。見たでしょう? あの早業」

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