月下の誓約


 槍を離して両手で刀を握り直すと、白く荒い息を吐きながら前方を見据えて身構える。

 生臭い血の匂いと傷口から止めどなく流れ出す血が、和成の意識を朦朧とさせた。

 あと何人?
 目の前に兵がいるのはわかるが、数が数えられない。




「こんな子供に護衛なんか任せて大丈夫なの?」




 突然、頭の中で初めて会った時の幼い紗也の声が聞こえた。


「俺だって、こんな子供のお守りは御免ですよ!」


 あの時は売り言葉に買い言葉で、いきなり怒鳴りつけて塔矢にげんこつを喰らった。

 どうして今、こんな昔の事を思い出すのだろう。

 和成はフッと笑みを漏らす。


(走馬灯ってやつか……。いよいよヤバイのかな)


 血まみれで笑う和成に浜崎兵たちはたじろぎ、しばし攻撃が止んだ。

 身体から血が流れ出すのと共に、力も意識も徐々に抜けていく。

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