月下の誓約
「ありがとうございます。けど、この団体三十名様まで二割引ってもしかして……」
「おまえは焼肉をひとりで食いに行く寂しい奴か? そういう事だ。動けるようになったら肉を食って流した血を補充しろ」
和成は再び苦笑する。
「やっぱりお見舞い返しが高くつきそうです」
少しして和成は塔矢から目を逸らし表情を曇らせた。
「塔矢殿。途中から記憶がありません。もしかして私はまた……」
「あぁ。以前とはちょっと違ってたがな」
「また、見境なしに皆殺しにしたんでしょうか」
「見境は一応あったみたいだぞ。間合いに入った者だけを斬ったようだ。俺を斬ろうなんざ十年早いがな」
そう言って塔矢は、和成の額を指先で弾く。
「すみません」
「まぁ、そのおかげだろうが、とろそうな若い奴が一人生き残ってたぞ。おまえを軍師だと指摘したとか言ってたな」