月下の誓約


「ありがとうございます。けど、この団体三十名様まで二割引ってもしかして……」

「おまえは焼肉をひとりで食いに行く寂しい奴か? そういう事だ。動けるようになったら肉を食って流した血を補充しろ」


 和成は再び苦笑する。


「やっぱりお見舞い返しが高くつきそうです」


 少しして和成は塔矢から目を逸らし表情を曇らせた。


「塔矢殿。途中から記憶がありません。もしかして私はまた……」
「あぁ。以前とはちょっと違ってたがな」
「また、見境なしに皆殺しにしたんでしょうか」

「見境は一応あったみたいだぞ。間合いに入った者だけを斬ったようだ。俺を斬ろうなんざ十年早いがな」


 そう言って塔矢は、和成の額を指先で弾く。


「すみません」

「まぁ、そのおかげだろうが、とろそうな若い奴が一人生き残ってたぞ。おまえを軍師だと指摘したとか言ってたな」

< 475 / 623 >

この作品をシェア

pagetop