月下の誓約


 塔矢は腕を組んで椅子の背にもたれた。


「人形でなくなったから、相手に興味を示してしまったわけか」

「人の心を手に入れるというのは、軍人にとって諸刃の剣なんですね。塔矢殿はどうなんですか?」

「俺か? 俺の愛情は絶対量が決まってるんだ。普段はその大半を家族と紗也様に与え、余った分を他のものに使っている。だが戦場では、残りは全部おまえら前線の兵に使ってるからな。敵兵にまで与える分は微塵もない。俺が敵兵に容赦ないのはそう言う理由だ」

「敵兵に鬼のように言われてますよね」


 和成が笑って指摘すると、塔矢もニヤリと笑って和成を指差す。


「おまえの戦鬼伝説も七年ぶりに復活したぞ。あれ以来、浜崎の兵を国境付近で見なくなったらしい」

「その伝説、あまりうれしくありません」


 和成は顔をしかめた。

< 477 / 623 >

この作品をシェア

pagetop