月下の誓約


 浜崎軍が国境付近をうろついて、何を画策していたのかは結局不明のままである。
 だが、和成が瀕死の重傷を負ったあの事件以来、国境の警備兵が浜崎の兵を見かける事はなかった。

 塔矢は立ち上がって和成を見下ろしながら静かに微笑んだ。


「よく還ってきたな。俺もおまえが死ななくてよかったと思ってる。後で薬を届けさせよう。もうしばらくは、おとなしく寝てろ」

「ありがとうございます」


 部屋を出て行く塔矢を見送った後、和成はまた目を閉じ、うとうとと眠りについた。

 動いて傷口が開いたせいか、少し熱が上がってきたらしい。

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