月下の誓約
けたたましく部屋の戸が開けられる音に驚いて、和成は目を覚ます。
「和成――っ!」
その声で入口に目を向ければ、紗也が駆け込んで来るのが見えた。
紗也はその勢いのまま和成に飛びつくようにしてすがりつく。
衝撃に傷口が疼いて和成が思わず声を漏らすと、紗也は身体を離して更に大声を上げた。
「ごめん。痛かった?」
あまりの騒々しさに、再び男性看護師が駆けつける。
紗也の姿を認めて、彼は戸口から声をかけた。
「紗也様。和成殿はまだ安静が必要です。お手柔らかにお願い申し上げます」
「ごめんなさい。気をつけます」
素直に謝る紗也に、看護師は恐縮して頭を下げる。
そして部屋の戸を閉め、立ち去った。