月下の誓約


 相変わらず目の前の事しか見えていない紗也に、和成はクスリと笑う。


「お元気そうでなによりです。足はすっかり完治なさったようですね」


 寝台の横に塔矢が置いた椅子に座ると、紗也は和成の顔を黙って見つめた。
 その目にみるみる涙が浮かび、あふれて頬を伝う。


「和成が生き返ってよかった……」
「いえ、死んでたわけじゃありませんから」


 和成が嘆息すると、紗也は寝台の縁を握りしめて俯いた。
 握りしめた手の上に涙がポタポタとこぼれ落ちる。


「だって、あんなにいっぱい血が流れてたから」
「ご覧になったんですか?」


 紗也は小さく頷いた。

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