月下の誓約
「最初は言われた通りにしてたの。でも和成の声が聞こえて目を開けたら、和成が血を流してた。叫びそうになったけど、私が騒いだり動いたりしたら、また和成に迷惑がかかると思って、もう一度言われた通りにしたの」
「怖い思いをさせてしまって、申し訳ありません」
和成がそう言うと、紗也はフルフルと首を振る。
「和成が目を覚まさなかったらどうしようって、その方がずっと怖かった。前の戦の時に懲りてるはずなのに、また勝手な事して和成の命を奪いそうになるなんて。でも信じて。和成に迷惑をかけたかったわけじゃないの。だって私……」
紗也はそのまま目を伏せて黙り込んだ。
泣くのを我慢しているのか、口を引き結んで顔を赤くしている。
和成は微笑んで、優しく告げた。
「あなたに悪気がない事は存じております。どうかもう泣かないで下さい。私はあなたがご無事でしたことを何より嬉しく思っております」
紗也は涙を拭って、少し笑顔を見せながら立ち上がる。
「疲れちゃいけないから、もう帰る。また来るね」
そう言って紗也は病室を出て行った。