月下の誓約
8.岐路
三日後、歩けるまでに回復した和成は、病室を出て自室での療養へと切り替わった。
雪祭り期間中は業務も縮小されているので、城内は閑散としている。
和成は寝ている間に落ちた体力を回復するため、人気のない城内をうろうろと歩き回った。
散々歩き回った後、自室前の中庭へと降りる石段へ座り込む。
雪に覆われた薄明るい中庭に、更にしんしんと雪が降り積もる様をぼんやり眺めていると、昼食を終えた紗也が渡り廊下を渡ってこちらへやって来た。
和成は立ち上がって、紗也に挨拶をする。
「お久しぶりです。紗也様」
和成の姿を見た紗也は、困惑した表情を浮かべた。
「あ、和成。もう動いていいの?」
「ええ。すっかり傷もふさがって歩けるようになりました。薬が効いたんですかね?」
和成がからかうような笑顔で自分の頬を指差すと、紗也は顔を赤くして俯く。