月下の誓約

 8.岐路



 三日後、歩けるまでに回復した和成は、病室を出て自室での療養へと切り替わった。

 雪祭り期間中は業務も縮小されているので、城内は閑散としている。
 和成は寝ている間に落ちた体力を回復するため、人気のない城内をうろうろと歩き回った。

 散々歩き回った後、自室前の中庭へと降りる石段へ座り込む。

 雪に覆われた薄明るい中庭に、更にしんしんと雪が降り積もる様をぼんやり眺めていると、昼食を終えた紗也が渡り廊下を渡ってこちらへやって来た。

 和成は立ち上がって、紗也に挨拶をする。


「お久しぶりです。紗也様」


 和成の姿を見た紗也は、困惑した表情を浮かべた。


「あ、和成。もう動いていいの?」
「ええ。すっかり傷もふさがって歩けるようになりました。薬が効いたんですかね?」


 和成がからかうような笑顔で自分の頬を指差すと、紗也は顔を赤くして俯く。

< 485 / 623 >

この作品をシェア

pagetop