月下の誓約
問いかける和成に、紗也は激しく首を振る。
「ううん。あったかくて安心してふわふわ気持ちいいのは同じなんだけど、和成だとドキドキして眠くならないの。最初はビックリしたからなのかと思ったけど、そうじゃなかった」
紗也の次の言葉に期待して、和成の鼓動はどんどん高鳴る。
紗也は和成を見上げて問いかけた。
「ね? 私、和成に恋してるよね?」
ひときわ高く鼓動が跳ねて、和成は紗也から顔を背ける。
「私に聞かないで下さい」
とっさに後ろ手に腕を組むと、紗也が不思議そうに問いかけた。
「後ろに何隠したの?」
和成は顔を背けたまま、横目で紗也を見下ろしながら白状する。
「何も隠していません。あまりに嬉しくて、腕を捕まえてないと、あなたを抱きしめてしまいそうだから」
紗也は少し頬を染めて、はにかんだような笑顔を見せる。
「今はダメーっ!」
そう言って和成の横をすり抜け、執務室の方へ駆けて行った。